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ちょっと長めの独り言

私も異国人ね(山口つばさ「ブルーピリオド」感想)

ブルーピリオド読みました。11巻まで。面白かったです。
以下、ネタバレありの感想です。










ネタバレありの感想...なんですけど。なんですけど!
11巻で描写された橋田と小枝ちゃんのエピソードに全部持っていかれたので、ほぼ橋田と小枝ちゃんの話しかしていない。
苦手な方はご注意ください。



・ブルーピリオド11巻まで読んだんですけど、ちょっと橋田と小枝ちゃんのエピソードが性癖に刺さったまま抜けなくなっています。
・橋田、これまで芸術に対して表現者というより観察者であって、それはつまり小枝ちゃんの作品に対しても観察者であって、だからメンタルを崩した時の小枝ちゃんの作品に対して「今の方が心象表現として魅力的な作品」という評価が(小枝ちゃんのメンタルへの配慮より先に)来るんですよね。
・あの時点では観察者であると同時に傍観者であった。小枝ちゃんの問題に自分が介入するとか考えてなかったんだと思う。
翔也くんについて八虎に相談されたとき「どうもする必要ないやろ、ぼくらバイトがどうこうするなんて」「そんなおこがましいことする気そもそもないし」「ま、興味深くはあるけど」って言ってて、これは小枝ちゃんに対しても同じスタンスだったと思われる。
・このころ八虎に橋田って妙に冷めたところあるよなって言われて「そんなことない、こんなに慈愛に満ちた人間もそうおらんで」って言ってて、冗談っぽく言ってるけど本心だと思う。小枝ちゃんの作品にあの感想を抱く慈愛に満ちた人間!
・橋田は妹に「教えるのが上手い」「いつも自分の味方をしてくれて優しい」と言われる一方、姉と「子供に入れ込みすぎない方が先生に向いてるっていうじゃん」という会話もしており、姉のこの言葉は橋田のことを指した発言ではないけどこのあとの展開の伏線になってたんですね...。
・橋田、小枝ちゃんのトラブルの話を耳にして作品から内面を読み取ろうとしているように見える。「橋田ってほんと人の作品見るの好きね」「八虎はよく人のこと見とるんやね」で話を逸らしたのは、作品を通して人の心を見通そうとする自分に後ろめたさを感じている...のか?あるいは翔也くんに人として関わった八虎と自分とに差を感じている?
・小枝ちゃんの作品の変化を感じた橋田は「素敵な絵やね」「前見た時より色がピカピカしとる」って声をかけるんだけど、「でも全然だめ 鹿原さんより下手だもん」って笑顔で、でも光の無い目で返す小枝ちゃん...。
・小枝ちゃんの絵を評する橋田にまた「よく見てんね」と言う八虎と、「見てるだけや」と返す橋田。観察者の橋田。
・作品解説で泣きながら自分の絵を貶める小枝ちゃん、絵が上手なみんなを羨む小枝ちゃん、作品を投げ捨てる小枝ちゃん。ここから橋田の立ち位置が観察者から変わったんだと思う。橋田の心情は描写されてないけど、小枝ちゃんを見て何を思ったんだろうか。これは私の見方のせいかと思うんだけど、これまで傍観者だった橋田はこの日の小枝ちゃんの様子を見て傷ついているように見えるんだよな。
・別の日、絵画教室に来た小枝ちゃんに橋田先生は合作しようと誘う。観察者としての橋田の終わり。共に作品を作る人になろうとするんだなあ。ここの合作の描写、心の内側の交わりっぽくて好きだ。
・描きながら、自分は絵を描くことが実は苦手だと吐露する橋田。「泣きながら手を動かせる人を尊敬してるんや、飛び込める君は本当にすごい」「でも小枝は何もできないよ」「僕にとっては特別やで、ほんまは絵画教室で描く気なかったんやもん」良い...。良いシーンですね...。
・合作した作品抱きしめて嬉しそうな小枝ちゃん、「ずっとずっと大事にするね!」っていう小枝ちゃん。
・合作のシーンめちゃくちゃ幸せな分、お父さんが作品を2等分するシーンとの落差がヤバい。
・「ここで切っていいの?」じゃないんですよ。切っていいわけなかろうお父さん!!!!嘘でしょ!!?!?!?
・橋田が怒ってるっていうか、マイナスの感情を表出してしまっているのって初めてじゃないですか?
・橋田は感情の表出を一瞬でおさめて、破れた合作をセロテープで貼り合わせて「うん、なんともなかったなあ」って言うんですよね...。なんともないわけないのは橋田も小枝ちゃんも分かってるんですよ...。でも小枝ちゃんは橋田の優しさに対して「橋田先生...ありがとお...」って泣きながら言うんですよね...。2人とも優しくて悲しいんですよね...。小枝ちゃんと一緒に泣いてしまいたくなる。
...父!!!!!(怒り)
・小枝ちゃんが教室を辞めたあと、展示会で小枝ちゃんが挨拶に来た時、橋田が何を感じたのかは分からないんだけど、「僕、先生にも向いてないわ」っていうのは、姉との会話を踏まえれば「小枝ちゃんに入れ込みすぎた」っていうことなんだろうな、と思って...。橋田...。
・全部の習い事を辞めて、絵を描くことも辞めたあと、目に光が戻った小枝ちゃんを見て、「泣きながら手を動かせる人を尊敬してるんや」と言っていた橋田は何を思ったんですかね...。
・妹にも教えるの上手って言われて、ピカソの絵画解説でも八虎にいい先生になれそうって思われてた橋田。よく気がついて、優しくて、妙に冷めたところのある橋田。そんな橋田の、人間味のような、内面的な部分が垣間見れた11巻でした。っていうか橋田のことめっちゃ好きになってしまった。
・ちなみに橋田と小枝ちゃんのエピソードってこれで終わりですか??もっと掘り下げていただいてもいいんですよ????
・おまけページの中学生になった小枝ちゃんの描写で私が満足すると思うなよ!!!でもおまけページありがとうございました...!!
・橋田に関してはこれで先生としての道を歩むことはほぼ確定だと思う。きっといい先生になる。数年後、小枝ちゃんと先生になった橋田が再開するエピソードを全力で待機しています。

橋田と小枝ちゃん、橋田の心の引っかき傷みたいなものが癒されることはないまま別れたのが最高なんだよな。あの傷は小枝ちゃんの記憶とともに橋田の心に残り続けるやつです。間違いない。

みんなブルーピリオド最高だから読んで!!!!