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ちょっと長めの独り言

ひとりの夜(小野不由美「残穢」感想)

残穢、読みました。面白いと聞きつつ、ホラー苦手なので渋ってたやつ。ちなみに「家においてあるとなんか怖い」という前情報を得ていたので、図書館で3時間ほどで読了。

これは…!あれですね!パンデミックものですね!?前半めちゃめちゃ怖かったんですけど(特に主人公の家に若い男の声で電話がかかってくるあたり)、後半はこう、サスペンス感があった。ドキドキハラハラ系。

で、「読み終わった~思ってたほど怖くなかったな~」って本を閉じて、家に帰って一人でテレビ見てるときに背後での物音がして、突然恐怖が襲ってくる系の本ですよねこれ!?!?!?
なるほど、図書館で読んで正解かも…。家に本があると余計怖い。

なんだか小学校のころ流行った「○○という単語を20歳まで覚えてると死ぬ」という階段を思い出した。その話を聞いた時点で怪異から逃れられなくなってしまう。
後から来る系ホラー。引きずる系ホラー。
いや~夏にぴったりの本でした!怖い!

否認(ダン・ブラウン「インフェルノ」感想)

ダン・ブラウンインフェルノ」読みました。
ダン・ブラウンは本当にすごい。どうしてこんなに大人の中二心を揺さぶるエッセンスを散りばめつつドキドキハラハラのサスペンスを書けるのか。
ダンテ「神曲」っていうテーマもめっちゃいいよね!中二心めっちゃくすぐられるよね!!
あとね〜ダンテ×フィレンツェ×人口問題×ペストっていう組み合わせがすごく好き。今までの作品もそうだけど、芸術世界に浸るだけじゃなく社会問題を取り上げるのがよい。すごく良い。

あと、医師シエナとの会話で出てきた「否認」が印章的でかつタイムリーだった。今後人口が増え続け、何らかの形で人口減が必要になるという話をシエナがしたところ、ラングドンは話をそらした。自分の生命に危機が及ぶような話は認識しなくなる。それを「否認」とよぶのだとシエナは言っていた。
災害の度に言及される「正常性バイアス」もシエナの言う「否認」であるのかなと思った。
だとすれば、私たちが問題を認識するのはすごく難しいよね。でもそういった「否認」あるいは「正常性バイアス」という作用があると知っているだけで、その時の対応が変わってくるかもしれない。





あとこの前車庫で車をぶつけたんですけど、「ちょっと傷がついただけやろ〜」と思って目的地にそのまま向かい、改めて確認したところ車の扉が思いっきり凹んでた。あれも「否認」だったのかも…しれない…。

全ては僕の思うまま(池谷裕二「怖いくらい通じるカタカナ英語の法則」感想)

この世界に物体が実在するかは明らかではない。私たちには、「物体に触れた」という感覚があるだけだ。私たちが感知出来ないものがあれば、脳は「そこに有る」ということを認識出来ない。

カタカナ英語で、こんな論説に触れるとは思わなかった。この話から導かれるのが、「日本人は英語の母音を正確に認識することができない(=カタカナに置き換えて聞こえる)」ということらしい。

この本を書いたのは脳科学者の人。視点が違うと英語の勉強も新しい発見があって面白い〜!

きらい、きらいも(溝口敦「細木数子―魔女の履歴書」感想)

細木数子―魔女の履歴書」を読み終えて、めちゃめちゃ驚いたのが、筆者はこの仕事が始まるまで細木数子に無関心出会ったということ。なんだか信じられない!
読んでて「いやこれ筆者の偏見入ってない?」「筆者、細木数子大嫌いやん…いやむしろ大好きなのか…?」という感想を持ったのでとても意外。筆者は細木数子に対して愛憎入り交じった感情を抱いているのかと思った…。
本の内容を一言でまとめると「細木数子は女ヤクザである」って感じですかね。
読んでて楽しい話ではなかったけど勉強になった。

やさしくない男(佐藤優「はじめてのマルクス」)

「はじめてのマルクス」、読みました。

これはですね、タイトル詐欺と言って差し支えないのではないか。なにをもって「はじめての」なのか。少なくともマルクスの知識をこれから得ようとする人が読む本ではない。本の中でマルクスの理論が系統立って説明されている訳でもない。面白かったですけど!

私は労働資本制が嫌なんかなと思う。だから株式投資とか、労働せずにお金を増やせるやり方が好きなんじゃないかな。と言って自分が働きたくないことの理由付けをする。

それにしても全然初心者向けじゃないよ〜!
結局、マルクス的には「資本」=「関係から生じるもの」ってことでいいのかな。よくわからん! もっと賢くなったら読もう!

匂いのある生活(中島京子「小さいおうち」感想)

読みました!

小説は違う世界にトリップできるのがいいです。大正時代くらいの話なのかな。書き手の語る昔話は愛ある目線で語られるので、読んでいる私も自然とその時代のことを愛してしまう。
基本的に不倫の話は好きじゃないんだけど、これは語り手と奥さんの恋の話としても読めるのだなと最後の章を読んで思った。恋という名称が正しいかはわからない。でもあの二人の関係は特別だったんだ。

ラストの手紙のエピソードも好き。語り手は、自分のせいで会えないまま死に別れてしまった奥さんと板倉のことを後悔していたんだと思う。後悔というか、これで正しかったという気持ち半分、会わせてあげればよかったんじゃないかという気持ち半分、くらいだろうか。だからノートの中では過去をねじ曲げてしまったんだよね。

綺麗であたたかいお話でありつつ、人間の生々しい、えぐみのある感情が垣間見える、とても好きな小説でした。

怒り(佐藤優「人に強くなる極意」感想)

私、佐藤優信者で、「人に強くなる極意」もとても期待して読んだので、自己啓発本としては正直あまりに書き古されたことが書いてあって、少し残念だった。刊行されたのが2013年だったので、この時期に読めば新しい発見があったんだろうか。

ケアレスミスが命取り、というのは本当にその通りで、私が肝に銘じないといけない言葉だなと思った。