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ちょっと長めの独り言

匂いのある生活(中島京子「小さいおうち」感想)

読みました!

小説は違う世界にトリップできるのがいいです。大正時代くらいの話なのかな。書き手の語る昔話は愛ある目線で語られるので、読んでいる私も自然とその時代のことを愛してしまう。
基本的に不倫の話は好きじゃないんだけど、これは語り手と奥さんの恋の話としても読めるのだなと最後の章を読んで思った。恋という名称が正しいかはわからない。でもあの二人の関係は特別だったんだ。

ラストの手紙のエピソードも好き。語り手は、自分のせいで会えないまま死に別れてしまった奥さんと板倉のことを後悔していたんだと思う。後悔というか、これで正しかったという気持ち半分、会わせてあげればよかったんじゃないかという気持ち半分、くらいだろうか。だからノートの中では過去をねじ曲げてしまったんだよね。

綺麗であたたかいお話でありつつ、人間の生々しい、えぐみのある感情が垣間見える、とても好きな小説でした。