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ちょっと長めの独り言

やさしくない男(佐藤優「はじめてのマルクス」)

「はじめてのマルクス」、読みました。

これはですね、タイトル詐欺と言って差し支えないのではないか。なにをもって「はじめての」なのか。少なくともマルクスの知識をこれから得ようとする人が読む本ではない。本の中でマルクスの理論が系統立って説明されている訳でもない。面白かったですけど!

私は労働資本制が嫌なんかなと思う。だから株式投資とか、労働せずにお金を増やせるやり方が好きなんじゃないかな。と言って自分が働きたくないことの理由付けをする。

それにしても全然初心者向けじゃないよ〜!
結局、マルクス的には「資本」=「関係から生じるもの」ってことでいいのかな。よくわからん! もっと賢くなったら読もう!

匂いのある生活(中島京子「小さいおうち」感想)

読みました!

小説は違う世界にトリップできるのがいいです。大正時代くらいの話なのかな。書き手の語る昔話は愛ある目線で語られるので、読んでいる私も自然とその時代のことを愛してしまう。
基本的に不倫の話は好きじゃないんだけど、これは語り手と奥さんの恋の話としても読めるのだなと最後の章を読んで思った。恋という名称が正しいかはわからない。でもあの二人の関係は特別だったんだ。

ラストの手紙のエピソードも好き。語り手は、自分のせいで会えないまま死に別れてしまった奥さんと板倉のことを後悔していたんだと思う。後悔というか、これで正しかったという気持ち半分、会わせてあげればよかったんじゃないかという気持ち半分、くらいだろうか。だからノートの中では過去をねじ曲げてしまったんだよね。

綺麗であたたかいお話でありつつ、人間の生々しい、えぐみのある感情が垣間見える、とても好きな小説でした。

怒り(佐藤優「人に強くなる極意」感想)

私、佐藤優信者で、「人に強くなる極意」もとても期待して読んだので、自己啓発本としては正直あまりに書き古されたことが書いてあって、少し残念だった。刊行されたのが2013年だったので、この時期に読めば新しい発見があったんだろうか。

ケアレスミスが命取り、というのは本当にその通りで、私が肝に銘じないといけない言葉だなと思った。

エンドレス・エイト(ガルシア・マルケス「予告された殺人の記録」感想)

聞いてほしい。ガルシア・マルケス「予告された殺人の記録」めちゃめちゃ面白かった。

私、ガルシア・マルケスの作品人生ナンバーワンじゃないかっていうくらい好きなんですよ。だからこの小説も期待値MAXくらいで読み始めたんですけど、中盤までは「思ったほど面白くないな…」って思ってたんですけど、最後!殺人の場面は引っ張って引っ張ってラストに記述されるんですけど、それがカタルシスを感じさせて、パズルのピースがはまりこむ感じで、もう本当の本当に最高だった。ガルシア・マルケスさん信じてよかった。ありがとう。

この小説は私が大好きマジックレアリズム的な部分とか幻想的な部分があんまりないな〜と思ってたんですけど、最後、自分の身体からはみ出た腸についた泥を払って、自分の家の台所に歩いていくサンティアゴ・ナサールが最高だった。

あとね、バヤルド・サン・ロマンとアンヘラ・ビカリオも最高なんですよ。結局2人は再会してこれからのストーリーを予感させるんですけど、あのまま一生会わないのでもエモくてよかったなと思う。そして再会したからには幸せになれよ!

は〜ガルシア・マルケス、早くFGOに実装してほしい。そして青い血を流したり突然亀になったりしてほしい…。

たどりつく(横浜美術館ヌード展感想)

横浜美術館で開催中のヌード展。行ってきました。最高でした。めちゃめちゃ最高でした。


・びっくりするほど豪華な作品群。あまり美術に詳しくない私でも知っている名前がごろごろ。コスパが良い。
・何が最高かってそんなに混んでないんですよ。ルーブル展のような混み具合を覚悟して言ったんですけど、人が!そんなに!いない!!!なんで!?!?と思ったけど観賞する側としてはめちゃめちゃ嬉しいことでした。ゆっくり見れる。立ち止まっても押されない。一部屋あたり2~3周していた。
・そこまで人が入ってないように見えたのでお布施の気持ちも込めて公式図録買いました。ありがとう横浜美術館。またこういう展示お願いします。図録めちゃめちゃ面白かったよ。
・やっぱりなんといってもロダン「接吻」ですよね…。なめらかで吸い付くようだったよ。あれがエロすぎ扱いされてカバーかけられてたのもわかる。なんかこう…見てると興奮を催すよね…。
ターナーはちょっと、なんかこう、いたたまれないというか見てはいけないものを見てしまっているのではないかという気持ちが拭えなくて、あまりにターナーのプライベートな領域に踏み込んでしまった気がして大丈夫?これ見ても大丈夫なやつ???っても思いながらガン見してた。前に手塚治虫のエロいフェチ絵が出てきた時も似たような気持ちになったんだけど、ターナーだもんね。ターナー支持者がいくつかの写真を処分した気持ち、わからないでもない。ヌード展ではこのターナーの絵が1番エロいと思いました。
ドガ好き。みんな大好き印象派
・ボナール、今まであまり興味がなかったんだけど、今回展示されていた絵、めちゃめちゃ好きだった。柔らかい色使いの、親密な絵。
・人気があったのは、やっぱりロダンの部屋の作品群。あとはシュルレアリスムの部屋。眠るヴィーナスの周りに人だかりができてた。
・現代の美術全然知らないんだけど作家さん沢山知れて楽しかった。フランシス・ベーコンは(思想家…?)って思いながら見てた無知さなので。
・本企画展で、初めて知って好きになったのはアルベルト・ジャコメッティさん。好き。

格差社会(ダン・ブラウン「ロスト・シンボル」感想、ロバート・フランク「成功は偶然を味方にする」感想)

ダン・ブラウン「ロスト・シンボル」下巻も読み終わりました。面白かったー!
以下めっちゃネタバレです。


マラークの正体は、正直すぐ分かってしまった。上巻の彼のエピソード出た時点でめっちゃわかる。
でも、正体がわかっててもすごく楽しめた。ダン・ブラウン、父と息子の話がきっと好きなんだろうなー。

あとね、マラークのせいで迎える「アメリカの危機」、多分隠された超危険な兵器が起動されてしまう…!とかだと思ってたら全然違って、俗っぽくてめっちゃ感情移入してしまった。その動画をYouTubeにアップロードされるのを必死で阻止しようとするサトウの気持ちめちゃめちゃわかる。

主人公補正なのは分かるけどトリッシュが死ぬのにロバートが死なないのは卑怯では…。トリッシュも救ってくれ。



引き続き、ロバート・フランク「成功する人は偶然を味方にする」感想。こちらは期待したほど面白くなかった。
一言で言うと、「成功した人のなかで運が悪かった人はいない」「公共投資をもっとするべき」ということが書かれている。
で、その説明としてずらずら〜っと具体例などが並べてある。237ページ。途中で飽きちゃった。
この本を自己啓発本として読むなら、「夢を叶えるゾウ」を読んだ方が早いかも。同じようなことが書いてある。
累進消費税の話は面白かった。あと私たちは自分の能力を平均以上だと認識する傾向にあるという話も。どこかで聞いたことがあるなと思ったらレヴィ=ストロースサルトルを批判した時の文脈ですね。

異邦人(ダン・ブラウン「ロスト・シンボル」上巻感想)

ダン・ブラウン「ロスト・シンボル」読んでる。上巻読み終わったところ。わりと上下巻読み終わったところで感想書くことが多いのだけど、気になったことがありましてですね。

先日、「天使と悪魔」を読み終わってたんですけど、「天使と悪魔」で一緒だったヴィットリアはどこに行ったんですかね? なんか、存在が消されてる感がある。でもバチカンでの一連の事件はあったことになってる。ヴィットリアの話は出てこない。怖い。

主人公の「友人」や「関係者」は、事件ごとに一新される。回想に出てくる学生たちは、ただ「学生」としての役割だけを負った、のっぺらぼうみたい。

主人公以外の登場人物は、ちゃんとその時代その場所で暮らしてきた歴史があるのに、主人公だけ切り取られてポイっとその世界に放り込まれたような異物感がある。あの奇妙な、世界に受け入れられていない感じ、気持ち悪くてすごくいいと思う。なんか文学的な感じがする。

全然本題と関係ないね。下巻も楽しみです。