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ちょっと長めの独り言

霧を払う手(佐藤優「ゼロからわかる『世界の読み方』」感想)

ゼロからわかる「世界の読み方」、面白かった。この著者の本はいつもとても勉強になる。

・なぜ金正男はあのような形で殺されたのか。もっと目立たずに殺すことも出来たのに。
あの殺し方はメッセージだった。北朝鮮の、金正日金日成の血統の人々への。今までは彼らは「正しい血統」として殺されることはまずなかった。けれどこれからは、君たちもこうなるんだよっていう金正恩からのメッセージだった。
金正男はなぜ殺されたのか。もしアメリカが金正恩を殺した場合、次の政権のトップにだれを据えるか。おそらく金正男になる。それもあって金正男をあんな形で殺した。
・業界では「殺す」という単語を使わず「中立化する」というらしい。金正男は中立化された。
トランプ大統領カルヴァン派。「自分には生まれた時から課された使命がある」という考え方。
・クォーター化の原則。4分の1しか知ってることを話さない。
麻原彰晃は「間違った考えをしている人間は魂が汚れる。魂が汚れたら復活の時に蘇られない。だから、まだ汚れの少ない今のうちに人々を殺した方が人々の救済に繋がる」と考え、地下鉄サリン事件を起こした。似た考え方をしていたのがルター。農民反乱を起こした人間は、魂が汚れつつあるので、今のうちに殺してあげた方が汚れが限定的なので復活出来る可能性がある。だから今すぐ全員殺してあげよう。ルターめっちゃ怖くない??? 良かれと思ってやってる感、余計怖い。
ロシア正教には「聖人は腐らない」という考えがある。モスクワの赤の広場にはレーニンのミイラがある。スターリンのもあったけど撤去された。「カラマーゾフの兄弟」ではゾシマ長老の死体から腐臭がして、アリョーシャがショックを受けるのはそのせい。
オバマの外交は帝国主義であった。相手の立場を考えずに自国の利益を最大限に優先することを要求し、反発がなければそのまま実施、猛反発されればほどほどのところで引っ込める。
・日本の政権交代フランス革命に似ている。貧しさから革命を起こし王様の首を切って(民主党が政権を取って)、富の再分配をさせた。でもジロンド派(民主党)には生産の思想がないから、インフレ政策を取ったりしたが国民を満足させられなかった。そこで政権をとったのがロベスピエールジャコバン派(自民党)。国民の生活を厳しく緊縮財政にして、秘密警察が取り締まる。安倍政権も共謀罪集団的自衛権など、社会の引き締めに入っている。ちなみにフランスはこのあとジャコバン派にも国民の反発が高まり、ナポレオンが登場。
ちなみにロシア革命ロールモデルフランス革命で、かなり似た感じで推移した。革命後は多くの自由主義者が政府入りし(ジロンド派)、その後彼らを締め上げて左翼的な政権を作るボリシェヴィキ革命が起きた(ジャコバン派)。そして最後にスターリンが粛清で権力掌握(ナポレオン)。
パレート最適:幸せ度を増やすためには他の誰かの幸せ度を下げないといけない状態。
ナッシュ均衡:相手が戦争、平和維持どちらを選ぶかわからない状態だと戦争を選ぶのが最善手になってしまう。(忘備録。本の内容とはあんまり関係ない。)
カルヴァン派に「毒麦のたとえ」がある。毒麦は成長し切ってから抜かないとダメ。これが多分、トランプの対シリアの考えに影響している。ロシアがシリアでアサド政権側について50万人くらい殺しているけど、500万人くらいが許容範囲だとトランプは考えているんじゃないか。(とんでもない話をしてる…)

いやあとっても面白かったです。大満足。

マスカレード・ホテル(東野圭吾「マスカレード・ホテル」感想)

読みました。東野圭吾「マスカレード・ホテル」。
以下感想です。

普通に面白かったです。特にミステリー以外の部分!
登場人物が魅力的なのはすごくいい。山岸さん、これで新人指導が苦手といっても説得力がない。
ミステリーは謎が解けてみれば矮小だったのだけど、それは「ミステリー」という物語の性質上仕方のないことなのかなと思う。
こういう「普通に面白い」作品を継続して出版するのすごく難しいと思う。東野圭吾はすごい。

あと、自分の仕事への向きあいかたも身につまされた。こんなに命かけてないもの私。もっともっと学ばないとダメだなあ。と思わされた作品でした。
仕事に懸けてる人、輝いているんだなあ。

天国への扉(ダン・ブラウン「天使と悪魔」感想)

ダン・ブラウン「天使と悪魔」読みました。
以下ネタバレです。




この話、もしかしてちょっとした行き違いから始まった敬虔な信者による壮大なストーリーだったの…?
めっちゃつらい。最後のほう、自分の思い込みがみんなの前で暴かれるシーンとてもつらい。
あと思い込みで殺された枢機卿やら前教皇やらのみなさんもつらい。
あとカメルレンゴのかっこいいシーンの数々、自作自演だと思うとなんかいたたまれない気持ちになる。反物質見つけるところとか。いやお前が置いたんかい。啓示を受けたんじゃないんかい。
えっほんと…カメルレンゴお前どうするん…って思ってたら燃えた。そうか、君は燃えるのか。

コーナー、普通に黒幕だと思った。いい人じゃん…。撃ってごめんね。
あとイルミナティの人気ゲーム、謎解きに関係してくると思ったらひとつも関係なかった。

読みながら「なんかこれ読んだことある…?」と思ってしまったけど、ダ・ヴィンチコードと構成が同じなんだね。暗号を読み解き、目的地にたどり着くと次の暗号が示されてる。
あーめっちゃイタリア行きたい!街にどーんと置かれた世界的な芸術品の数々、見に行きたい!

凍える冬に帰りたい

春は苦手だ。しあわせな季節だから。
すべてのものが柔らかくてふわふわしている。淡い色。ピンクと黄色とオレンジ。ハッピーな気分。C調の曲。
全部、私には不釣合に感じてしまう。

冬が好きだ。
厳しい夜明けの寒さが好きだ。雪はそんなに好きじゃない。けど、街に静かに雪が降り積もるのを見るのは好きだ。いらない音と、いらないものを吸収しながら降り続ける雪。

凍える冬に帰りたい。
(花粉もう飛ばないでほしい。)

蓄積という力(マルコム・グラッドウェル「天才!」感想)

読み終わりましたマルコム・グラッドウェル。印象に残ったこと。

・IQが高いほど成功するわけではない。研究の世界ではある程度までのIQは必要条件だが、一定のIQ以降は属人的な性質に成功が左右される。アインシュタインのIQは135。

・プロのラグビー選手はほとんどが1月など早い時期に生まれている。小学校で比較的体が大きいため、上のレベルのチームに入りやすく、そのまま質のいい練習を続けてプロになる。

・10000時間の練習をすれば、本物になれる。短くて4年ほど。

・同じIQが高い人でも、成功するか否かは環境による。IQ195で牧場を経営する男。

ビル・ゲイツは、 生まれた時期がよかった。また、チャンスを掴むときにコンピューターに習熟していたという運のよさだった。

・わずかなアドバンテージ(生まれた時期、年)が将来を左右する

・天才になるためには10000時間のトレーニングが必要。8時間×4年ほど。

などなど。巻末の勝間和代の解説、まとまっててとても分かりやすい。本書の内容から「子供の貧困」に触れているのもなるほどなあと思った。

傷口(板倉雄一郎「社長失格」感想)

板倉雄一郎「社長失格」を読んだ。

こうやって失敗した人の体験談を読めるのは貴重。読み手は倒産したことを知りながら読み進めるので、順調に融資を受けながら事業を広げる場面とかキリキリしながら読んでいた。

会社倒産した人の物語に常にあるのが、人の問題。人の問題はどの会社にもあるものだろうけど、それが致命的なものになるまで修復できなくなったとき、倒産に繋がるのかなと思うなどした。

最後に筆者がこの話を書いた思いみたいなのが綴られている。血を流しながらこの本は書かれている。

羊と鋼の森

宮下奈都「羊と鋼の森」読みました。あまりにタイトルが素敵なのでそのまま記事タイトルに。

・「羊と鋼の森」とはピアノのこと。羊の毛のフェルトでできたハンマーが鋼の弦をたたく。
・和音のピアノは銀色にすんだ森に道が伸びていくような音。そのずっと奥で、若いエゾシカが跳ねるのが見える。そんなこんな比喩がすごくきれいな小説。

ピアノの物語ってよくあるけど(のだめとか)、調律師の話は新鮮。
ちょうど全日本音楽コンクールの番組も放映していて楽しかった。