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ちょっと長めの独り言

春にして君を離れ(アガサ・クリスティ「春にして君を離れ」感想)

読みました。アガサ・クリスティ「春にして君を離れ」。
お、面白かったです…。以下ネタバレ配慮してない感想です。















・これ、ある意味でのホラー小説ですよね? 震えながら読みました。
太宰治人間失格」は読んだあと「この主人公は自分だ」と思う人と思わない人に分かれるって言うけど、 この「春にして君を離れ」の主人公はですね、私だ、と思いました…。私だった…。正確には主人公からテキパキさとか美しさを取り除いたら私ですね。
・あの、現実を自分に都合よく解釈する感じ、周りの人々に献身していると自分では思っているがその実自分にしか興味がない感じ、砂漠で改心したと思ったけれど家に帰ると結局易きに流れて全く元通りになる感じ…。わ、私では…?こわ…。
・ちなみに以前「この主人公は自分だ」って思ったのは市橋達也「逮捕されるまで」だったので、私のクソさがよく分かりますね
・というかアガサ・クリスティってミステリーのイメージが強かったのでこんなストーリーだと全然思ってなかったんですよ。いやびっくりした…。これ、私が主人公に感情移入して読んでたのでほぼホラーだったんですけど、客観的に読めば「パッと見は品がよくしっかりした感じの、でも実は周りの人たちを見下してて鼻につく感じの中年女性が、己が身を置いている現実に徐々に気づく話」だからメシウマ小説だと考えてもいいのかもしれない。
・個人的にはあの徐々に現実に気がついていくところもホラーだったんですけど、1番怖かったのは、砂漠であれほどまでに懺悔し、生まれ変わったかのような様子だったのに、家に帰った瞬間にその改心を全て無かったことにして旅行に行く前の彼女に戻ったことですね…。あのシーンめちゃくちゃ怖かった…。まるで「砂漠でおかしなことを考えちゃった」って感じでしたもんね。
・あ、易きに流れたんだなって思った。


あーーー面白かったです。今年1番かもしれない。おすすめです。