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ちょっと長めの独り言

もっと素直になればいいのに(岸本佐和子、吉田篤弘、三浦しをん、吉田浩美「『罪と罰』を読まない」感想)

たぶんTwitterでオススメされてたのかな〜と思うんですけど「『罪と罰』を読まない」読みました。もうめちゃくちゃ面白かったです。
以下ネタバレありの感想です。








・「罪と罰」を読んだことのない4人が集まって、「罪と罰」の読書会するやつ。
・この説明でなにかビビっとくるものがある人。読んだ方がいいです。その期待、裏切りません。
・「罪と罰」を読了済みだとなお楽しめる。私は「罪と罰」を手元に置きながら随時見比べてたんですけど、それはもう楽しい。間違いない。
・ちなみに「昔読んだけどほぼ話忘れた」の人も楽しめます(私)。一緒に推理に参加できます。
・集まる4人は作家さんなんですけど、やっぱり視点が作家視点なんですよねー。「このあらすじでこのページ数、あなたならどのタイミングで殺させる?」「各章同じくらいのページ数なのは連載作品だったからかな」とか。っていうか「与えられた題材であなたならどんな構成にする?」とかの話題はファン垂涎でしょ!


・私、ドストエフスキーの文章はダラダラっと長いのが苦手なんですけど、皆さん「長すぎ!この3分の1でまとめられるでしょ!」って叫んでて嬉しかった。みんな同じこと思うんだな。
カギカッコ始まってからとじるまで数十ページとかあるの異常でしょ
・でも「状況説明をキャラクターに語らせる」のはよくある手法らしくて。人形浄瑠璃とか泉鏡花風らしくて勉強になる。
・マルチエンディング罪と罰、読みたいな…。っていうか作家さんも書いている途中で「この展開もいいね」って思うことあるんですね
・この後の展開を予想する時、ドストエフスキーの気持ちになって予想してるの面白い。なるほどね〜
・私は小説を読む時その時ハマっているジャンルのキャラクターで再生されるタイプなんですけど、罪と罰を読み直すとラスコリーニコフがうちはサスケ、ソーニャが日向ヒナタ、ドゥーニャがアルトリア、スヴィドリガイロフがランスロット(長髪)で再生されました。つまりハマっているジャンルが10年単位で更新されていない。これが老化。

・満を持して本編読了した4人がめっちゃ盛り上がってて楽しそう。この企画、名作で行うのが重要ですね。せっかく色々話し合っても本編が面白くないと盛り下がっちゃうもんね。
・ラスコリーニコフ、「人殺しなのに謎の上から目線でソーニャに説教をたれている」とボロクソに叩かれてる。
・私の好きなスヴィドリガイロフ、4人の間でも人気で嬉しい。
・ラスコリーニコフの部屋の戸締りのガバガバさに言及されている。
・「ドストエフスキーは自分の死刑が直前に回避されて、思想に基づく社会の改革ではなく人間本来のなにか、あるいはキリスト教に基づいて社会を変えなければならないと考えたんじゃないか」なるほどなあ
・ソーニャは教祖(わかる)
・スヴィドリガイロフとドゥーニャの関係に触れられていたんですけど首がもげそうなほど激しく共感してしまった。「スヴィドリガイロフはドゥーニャに殺されたかった」「スヴィドリガイロフにとってのドゥーニャはラスコリーニコフにとってのソーニャと同じ」「ソーニャに許されたラスコリーニコフと違い、スヴィドリガイロフはドゥーニャに許されなかったし、拒絶もされなかった」そう、そうなんですよ!!!!そう!!!!
・「濡れ場のない本作において、ドゥーニャとスヴィドリガイロフのシーンは異常にエロかった」そう!!!!!!そう!!!!!全然エロないんですけどとてもエロいんですよ…すごいね…
・スヴィドリガイロフが自分を殺せと迫って、でも殺せなかったドゥーニャが拳銃を捨てて、スヴィドリガイロフが彼女を抱きしめて会話を交わし、そして離すまでの数ページはね、罪と罰のもうひとつのクライマックスですよ…(通常のクライマックスは十字路で大地に接吻するシーン)
・結婚するならラズミーヒンかスヴィドリガイロフか?っていうオタクみたいな話題(歓喜)




いや本当にめちゃくちゃ面白かったしドゥーニャとスヴィドリガイロフの最高さについて再認識できました。超オススメ。
今年のベスト本は「三体」で決まりだと思ってたんですけど豊作ですね。嬉しい限りです。