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ちょっと長めの独り言

見捨てられた未完成品(架神恭介/辰巳一世「完全教祖マニュアル」感想)

読みました。「完全教祖マニュアル」。以下感想です。




・自分が浄土真宗なので、その辺りの解説がめちゃくちゃ面白かった。「南無阿弥陀仏」って唱えただけで救われるけど、「南無阿弥陀仏」って唱えることは極楽浄土ジムへの入会権を手に入れたということであり、無事死亡したあかつきには極楽浄土ジムで阿弥陀トレーナーのもとムキムキ仏を目指すことになるんですね。つまり現世では「南無阿弥陀仏」と唱えること以外はなにも頑張らなくていいけど、死んでから極楽浄土ジムでめちゃくちゃ修行しなければならないと。死んでから頑張るんだと。えっそうなの初耳なんですけど? 死んだら極楽浄土でゆっくりする予定だったんですけどそんな感じなの??
・あと「神が存在するか否かは教祖であるあなたには全くどうでもいいことです! 大切なのはあなたの教えによって皆がハッピーになれるかどうかです!」っていうのも目からウロコであった。そうかあ。そうなのかあ。
・そういえば高校の社会の先生は「新興宗教は100人を地獄に落とすかもしれないが1人を救いあげる」が持論の人だった。宗教の教義が正しいかはともかく、宗教を信じることによって幸せになる人がいる。
・「不安を煽ろう」の章でうまくいってる例としてエコを挙げてるのめっちゃ笑った。これ怒られが発生するのでは? でも本当にその通りなんだよな。今困ってない人に対して「あなた実は困ってるんですよ」っていう手口...(手口?)。
・あと宗教から抜け出しにくくする手段としての「予定説」もよく考えられてるなって関心した。私が今神を信仰しているのは神が信じさせてくれているからであり、ふと信仰に疑問を持った時、それはすなわち神に見捨てられたということになる。すごい賢いやり方だよな...。
・「血脈なんか気にスンニ、血脈を気にシーア」この語呂合わせを高校生の私が知ってたらもうちょっと世界史の点数よかったかもしれない。
・「水からの伝言」、氷の結晶を通じて己の価値観を表明(「ハードロックは嫌いです」「ヒトラーは悪い人です」)しているだけの本なので、新たな表現手段で自己の世界観を表現したポエムだと。なるほどなあ。
アショーカ王とか世界史で習った偉人たちが出てくるので世界史好きな人にもおすすめ。
・最後の「感謝のお手紙」、これやっぱり怒られが発生するのでは?

世界各地の宗教を全体的に学べるしとてもおもしろいしひどい。最終的に国教化を目指し、国教化することによるメリットデメリットを検討してて本当にひどい。大変おすすめの1冊です。