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ちょっと長めの独り言

夕暮れのアリス(高野秀行「未来国家ブータン」感想)

高野秀行の「未来国家ブータン」、読みました。もーめちゃめちゃ面白かった〜!
前に読んだ「土漠の花」の舞台がソマリアで、この高野秀行ソマリランドの本面白かったよな〜とふと思い出して、こちらの本を読みました。いや〜読んでよかった〜めちゃめちゃ面白かった〜。
以下ネタバレ感想です。














圧倒的に面白かったのが毒人間の話。こういう秘境で、しかも表向き環境立国、幸福国家を唱えている国で、タブー扱いされている差別の話。不謹慎極まりないんですけどめっちゃ面白い。著者、もっと突っ込んで聞いてほしい…。
いえ、最後には差別は可視化されており現国王によって差別撤廃が進んでるって話だったんですけど。
あとたまらないのは5本の触手が生えた帽子を被るサクテン村の人々…。みんな外部から来た著者には何を聞かれても「知らない」「そんなものは無い」って答えるの。で、村の偉いお坊さんに「彼を案内してあげて」って言われると打って変わったように村の各地を説明してあげるの。すごく…楽しい…。この村もしかしてTRICKで出た?ってくらいのこの感じ。調べたらTRICK南シナ海だった。ボルネオ島ベトナムあたりらしい。残念、山岳地帯じゃなかったー。
うおーんブータンを舞台にしたサスペンスミステリめっちゃ読みたい…。黒幕は幸福国家を謳うブータン政府。絶対面白い。

以下箇条書き。
・ちょくちょく出てきてたけど遠野物語感あるよね? なんかミゲやチュレイについてブータンの人々が語るときの…書体が…遠野物語っぽくない??
ミャンマーは山岳地帯が多くって、崖に沿って道を歩く場面も出てくるんだけど、なんかそういうのRPGで見た〜って思って興奮した。
・旅の終わり、ずっと同行してくれたツェンチョ君の著者への冷めた対応について「対応が妻に似てきた」って評するところ、そこはかとなくBLの香りを感じた。
・写真が楽しい。どの村に行っても山に囲まれている。
・この人の本、とにかく文章が面白くて読み進めるのが全く苦にならないんですよね。そして、著者の目から見たブータンは輝いていて、不思議に溢れていて、謎に包まれていて、めっちゃ魅力的な国なんだよね〜! なんかこういう風に紹介してもらったら、もう自分の目で見なくてもいい、むしろ著者が与えてくれたイメージをそのまま持っていたいという気持ちになります。この人の本は本当にハズレがない。

いや〜面白かった〜。この方の腰痛の本もめちゃめちゃ面白いと聞いたのでそれも読んでみようかな〜。