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ちょっと長めの独り言

楽園の底(映画「海獣の子供」感想)

すごい。なんかすごいものを見た。
見ました海獣の子供…。すごかったです。
以下ネタバレありの感想です。


・事前の評判通り、映像がとんでもない綺麗さだった。海や水族館の描写も良かったけど、私は街の風景が好きだったなー。海辺の街、夏の日差しで全ての色が濃く映える街。冒頭の坂をかけ下りるシーンとか。CGと組み合わせた映像が本当にどこを切り取っても綺麗だった。そしてクジラのシーンはさすがの美しさだった。あと海の中が凄いんですよ。花畑か?楽園か?ってくらいの美しさ。圧倒的。
・主役3人の声がすごく良かった。芦田愛菜ちゃんってすごいな! うみくんとそらくんの声もとても良かったから、エンドクレジットめっちゃ注目してたんだけど2人とも知らない人であった。公式サイト見たら声優さんじゃない若い人なんだね。これから頑張ってほしい。
3人の声、それぞれすごく良くて、なんかえも言われぬ色気みたいなのを感じたんですよね…。それってあの年代の少年少女だけが持つものなのかもしれない。いや本当に声がよかったのでみんな見てくれ。
・映像のファンタジー感。豪雨の中自転車を漕ぐルカが海に泳ぐ景色。漁港からの道すがら乗せてもらったタンクローリーにまとわりつくイルカたち。最初のハンドボールのシーンの圧倒的な現実感から、徐々にそういう描写を差し込んでいって、気がついたら観客は非現実的な描写を受け入れている。
・私、この映画とスピッツのイメージが重なるんですよ。あと、村上春樹。理屈で説明できないもの。理解できないもの。
「君の名は」とかは「主人公とヒロインの時空が交錯する」っていう点がファンタジーで、観客側はその設定が理解できるのである意味安心して見れた。「海獣の子供」は理解できない。何がどこまでファンタジーなのか、わからない。どういう設定のファンタジーなのかわからない。そのわからないということに対する不安感や、わからないものはわからないまま観客が受け入れる感じが、スピッツの楽曲や村上春樹の小説と似ているように感じる。
・あと言語について。人間は言語化し得ないものは伝えることができない。クジラは、そのまま、あるがままを伝えることができる。クジラすげーってことより、人間の世界ってなんて不自由なんだろうっていうことが印象に残った。Twitterでも「言語なんて感情の下位互換」みたいなツイート見たもんな。そして言語からこぼれ落ちたものを、笛で風に語りかけるおばあさん。この映画の世界の言語に対する姿勢がなんかとても好きだった。
・後半、クジラに飲み込まれて以降の世界は、幼い頃に見た天国と地獄の世界のビデオを思い出した。人間が想像する、星の誕生と、天国と地獄の世界って似てるんだなあ。
・米津玄師、思った以上に映画に寄せた楽曲でびっくりした。歌い方も今までと違ってるよね? 効果音、「クジラの声かな? 星の落ちる音かな?」って思う部分があったんだけど、クジラの鳴き声と、星の落ちる音って似てるんだな。すごいな。
・私、この映画どちゃクソ面白いやんって思ったんですけど、見終わったあと同行者が「全然面白くなかった」って言ってて驚愕したんですよね。まじかよこんな名作映画だったのに!? でもその評価の違いも面白いなって思った。評価の違いは、上記の「わからない」をわからないまま受け入れる人か、理解してから受け入れたい人かの違いなのかなと思う。
あとね、海獣の子供、シナリオが気持ち少女漫画感がないですか? 同行者は男性だったのでその少女漫画感も肌に合わなかったのかなと思われる。
ちなみに私は空くん派です。空くんが夜の海に光りながら沈んでいき、そして彗星になるシーンが心にグッと来すぎて、あのシーン見た時点で既に私は名作認定していた…。大好きなシーン。


いやーとっても面白かった。今年の映画部門ナンバーワンかもしれない。
私も分からなかった所がいっぱいあるので、考察を読み漁りたい。そしてあわよくば2回目見に行きたい! みんなも見に行ってくれ! そして感想ブログ書いてくれ!