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ちょっと長めの独り言

「知る」ということ(「王とサーカス」感想)

米澤穂信「王とサーカス」を読んだ。

太刀洗の、「知りたいから記者と言う仕事をしている」というのは、太刀洗本人の気持ちとしてはよくわかる。でも、他人がその気持ちを理由に話してくれるかは別の話だ。
私は個人的に記者という仕事に苦手意識を感じている。何でなのかは、私自身にもよくわかっていない。多分、私が持っている情報という「価値」を、記者の人に無償で提供して、それに対して対価を与えられることもなく、大衆の「知りたい」という気持ちを満足させて、記者の人が報酬を得ているから、なのかなあと思ったりしました。なぜ記者の人だけ報酬がもらえるんだ…私にはないんか…みたいな。
大変な仕事だよね、とこの本読んで改めて思った。

太刀洗は最後、CNNやNHKが伝えるニュースを、さらに何故自分が伝えるのか、その意味は
「幾百人がそれぞれの視点で書き伝えることで、この世界がどういう場所なのかわかっていく」からだとしている。
私が生きていく世界がどういう場所なのか、明らかにしたいからだと。

米澤穂信の、わずかな苦味が残る読後感が大好きだ。
また米澤穂信の作品読みたい。